A10:地球温暖化の影響予測
<IPCCの将来予測手法>
・IPCCの第5次報告書(2013年)では、代表濃度経路を4タイプ用意し、それぞれの将来の気候を予測するとともに、その濃度経路実現する多様な社会経済シナリオを策定できる「RCPシナリオ」を用いています。
・このシナリオは、大気中の温室効果ガス濃度が放射強制力※の上昇に与える影響の大きさが、工業化以前と比較して今世紀末にそれぞれ8.5W/㎡、6.0W/㎡、4.5W/㎡、2.6W/㎡上昇した場合に対応します。
・RCP8.5は、2100年における温室効果ガス排出量の最大排出量に相当する最悪シナリオで、RCP2.6は将来の気温上昇を2℃以下に抑えるという目標のもとに、将来排出量の最も低い最良シナリオということです。
・例えばこのシナリオを使って「気温上昇を○℃に抑えるためには」と言った目標主導型の社会経済シナリオを複数作成して検討することが可能となるのです
放射強制力※:何らかの要因(例えば二酸化炭素濃度の変化,エアロゾル濃度の変化,雲分布の変化等)により地球気候系に変化が起こったときに,その要因が引き起こす放射エネルギーの収支(放射収支)の変化量(W/㎡)として定義される
<気温の上昇>
・IPCC第5次報告書では、陸上および海氷面を合わせた世界平均気温は1880年~2012年の期間にかけて0.85℃の上昇を発表しています。
・また、今世紀末には現在(1986年~2005年)と比較して0.3~4.8℃上昇すると予測しています。
<海面水位の上昇>
・平均海面水位については1901年〜2010年の期間で0.19m上昇したと発表しています。
・また、世界の平均海面水位は21世紀中に上昇し、今世紀末には1986年〜2005年と比較して、0.26~0.82m上昇するとの予測を発表しています。
<気温上昇2℃以内に抑えるためには>
・G8では、地球温暖化による不可逆的な影響を回避するには、今世紀末までに産業革命前と比べた全球平均の年平均気温の上昇を2℃以内に抑えるべき点で合意しています。
・今回の第5次報告書によると、CO2の総累積排出量と世界平均地上気温の変化はおおむね線形関係にあり、気温上昇上限から総累積排出量の上限が決まるとしています。つまり、気温上昇をより低く抑えるためには累積排出量をより少なくする必要があります。
・CO2以外の効果も考慮すると、産業革命前からの世界平均気温上昇を最も高い確率(66%以上の確率)で2℃以内に抑えるためには、790GtCの累積排出量が上限になるとしています。2011年までに、既におよそ515GtC排出していますので、2℃以内の気温上昇に抑えるための許容排出量は275 GtCとなります。このためにIPCCでは、温室効果ガス排出を21世紀半ばまでに40~70%削減し、世紀末までにほぼゼロにする必要があるとしています。
・温室効果ガス濃度の安定化には、エネルギーの生産と使用、輸送、建物、土地利用等からの排出削減が必要で、発電からの排出削減、エネルギーの効率的利用、森林破壊の抑制、植林推進などが期待されています。